ブックタイトル資料政経
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高校政治経済資料集
●2●第9条に対する政府解釈の推移●自衛権の発動としての戦争も放棄(1946年6月,衆議院委員会における吉田首相の答弁)「戦争放棄に関する本案の規定は,直接には自衛権を否定はしておりませぬが,第9条第2項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果,自衛権の発動としての戦争も,また交戦権も放棄したものであります。従来近年の戦争は多く自衛権の名において戦われたのでありしかます。満州事変然り,大東亜戦争また然りであります。」●警察予備隊は軍隊ではない(1950年7月,参議院本会議における吉田首相の答弁)まった「警察予備隊の目的は全く治安維持にある。それが国連加入の条件であるとか,用意であるとか,再軍備の目的であるとかはすべて当たらない。……従ってそれは軍隊ではない。」●戦力に至らざる程度の実力の保持は違憲ではない(1952年11月,吉田内閣の政府統一見解)「憲法9条2項で保持を禁止している戦力とは,近代戦争遂行に役立つ程度の装備,編成を備えるものをいう。戦力に至らざる程度の実力を保持し,これを直接侵略防衛の用に供することは違憲ではない。」●自衛権を行使する実力である自衛隊は違憲ではない(1954年7月に自衛隊が発足,同年12月に成立した鳩山内閣は,この自衛隊について政府の統一解釈として)「第9条は,……わが国が自衛権を持つことを認めている。自衛隊のような自衛のための任務を有し,かつその目的のため必要相当な範囲の実力部隊を設けることは,何ら憲法に違反するものではない。」●「戦力」とは自衛のための必要最小限度を超える実力(1972年11月,田中内閣の政府統一見解)「戦力とは,広く考えると文字通り戦う力ということであります。そのような言葉の意味だけから申せば,いっさいの実力組織が戦力に当たるといってよいでありましょうが,憲法第9条第2項が保持を禁じている『戦力』は,右のような言葉の意味どおりの戦力のうちでも,自衛のための必要最小限度を超えるものであります。それ以下の実力の保持は,同条項によって禁じられていないということでありまして,この見解は,年来,政府のとっているところであります。」●細菌兵器や核兵器も持ち得る(1978年3月,衆議院外務委員会における福田首相の答弁)わが国といたしましては,自衛のため必要最小限の兵備はこれを持ち得る,こういうことでございまして,それが細菌兵器であろうがあるいは核兵器であろうが差別はないのだ。自衛のため必要最小限のものである場第2節平和主義と日本の安全保障? 89合はこれを持ち得る,このように考えておる次第でございます。●自衛権の行使は交戦権の行使とは別である。(1980年5月,大平内閣の政府統一見解)まじ「憲法第9条2項の「交戦権」とは,戦いを交える権利という意味ではなく,交戦国が国際法上有する種々の権利の総称であって,このような意味の交戦権が否認されていると解している。他方,我が国は,自衛権の行使に当たっては,我が国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することが当然に認められているのであって,その行使として相手国兵力の殺傷及び破壊等を行なうことは,交戦権の行使として相手国兵力の殺傷及び破壊等を行なうこととは別の観念のものである。●集団的自衛権の行使は違憲である(1981年5月,鈴木内閣の政府統一見解)「国際法上,国家は,集団的自衛権,すなわち,自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を,自国が直接攻撃されてもいないにもかかわらず,実力をもって阻止する権利を有しているものとされている。我が国が,国際法上,このような集団的自衛権を有していることは,主権国家である以上,当然であるが,憲もと法第9条の下において許容されている自衛権の行使は,我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており,集団的自衛権を行使することは,その範囲を超えるものであって,憲法上許されないと考えている。」(? p . 1 0 4)●武器使用は自然権的権利である(1991年9月,海部内閣の政府統一見解)憲法第9条第1項の「武力の行使」は,「武器の使用」かかわを含む実力の行使に係る概念であるが,「武器の使用」が,すべて同項の禁止する「武力の行使」に当たるとはいえない。例えば,自己又は自己と共に現場に所在する我が国要員の生命又は身体を防衛することは,いわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから,そのために必要な最小限の「武器の使用」は,憲法第9条第1項で禁止された「武力の行使」には当たらない。資料を読むゆれる政府解釈憲法制定当初は,政府も吉田首相答弁にみられるように,第9条は一切の軍備を禁止し,自衛戦争をも放棄したものとしていた。その後,冷戦の激化による再軍備化とともに,第9条1項で「永久に放棄」したのは侵略戦争であって,自衛のための戦争ではなく,したがって2項で保持を禁じた「戦力」には自衛隊は含まれないとの立場をとるようになった。しかし,国連が認めている集団的自衛権の行使は限度を超え,違憲であるとしてきた(1・2)。2014年安倍内閣は憲法第9条の解釈を変更し,集団的自衛権行使を容認するとした(?p.104)。第1編現代の政治