ブックタイトル資料政経
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高校政治経済資料集
「学習の基本構造」を読むさんか1.戦争の惨禍と平和主義なか明治の半ば以降,日本は,日清,日露,第一次世界大戦,そして日中戦争から太平洋戦争へと,いくたびかの戦争をくりかえしてきた。とくに太平洋戦争で国民の受けた損害と苦痛は,大変なもゆくえのだった。死者,行方不明者は250万人を超え,1000万人以上の人が家を失った。米軍の無差別爆撃による東京大空襲では,死者が約10万人にも及び,米軍の上陸した沖縄では県民の約3分の1が殺された。そして世界史上初めての原爆による広島・長崎の悲惨な体験もある。犠牲となったのは,日本人だけではない。満州事変(1931)からの15年戦争を通じて日本は中国大陸や東南アジアを侵略した。それによって1000万人以上の人が死亡したといわれる。侵略戦争への責任も含めて,もう二度と戦争をしてはいけないという決意が憲法の平和主義の根底にはある。日本国憲法は,前文で,政府の行為により再び戦争の惨禍をくり返さぬこと及び積極的に世界平和に貢献することを宣言している。第9条は,この永久平和主義を具体化したもので,1項で「国権いかくの発動たる戦争」「武力による威嚇」「武力行使」を永久に放棄し,2項で「戦力の不保持」「交戦権の否認」を定めている。ここには国家間の紛争を武力によって解決せず,国際協調的な話し合いによって解決しようとする決意が示されいる。2.第9条と自衛隊第二次世界大戦後,米ソ冷戦の激化,朝鮮戦ぼっぱつ争の勃発などにより,アメリカの対日占領政策は非軍事化から再軍備の方向に転換,1950年マッカーサーの指令により警察予備隊が設置された。51年には対日平和条約で独立を達成するとともに,日米安保条約を結び,米軍の駐留を認めた。同時に自衛力漸増が期待され,52年に警察予備隊を保安隊に改組した。翌53年の池田・ロバートソン会談,54年のMSA協定で,自衛力漸増の義務を負い,同年6月防衛二法(自衛隊法・防衛庁設置法)の成立で,自衛隊が発足した。この自衛隊が憲法第9条に照らして合憲か違憲かの論争は,戦後最大の政治問題であった。政府は,憲法制定当初は自衛のための戦力の保持も第2節平和主義と日本の安全保障? 85許されないとの立場をとっていたが,まもなく,憲法がいう「戦力」とは自衛のために必要な最小限度を超える実力であり,自衛隊はそれには該当せず合憲との解釈を示し現在に至っている。また,自衛隊をめぐっては裁判の場でもその違憲性が争われた。長沼ナイキ基地訴訟では,札幌地裁が自衛隊の存在について初めて違憲の判決を下したのに対して,上級審が,高度に政治性をもつ問題は行政行為であって裁判所の審査になじまないとする統治行為論に立って自衛隊に関する憲法判断を回避し,地裁判決をくつがえした。3.日本の防衛と日米安保日本政府は,自衛隊と日米安保条約の二本立てでその安全保障政策を構成してきた。後者は,アメリカとの間の軍事的な同盟関係を維持することで国の安全を確保する政策で,アメリカとソ連が激しく対立していた冷戦を背景として成立した。その結果,日本国内にアメリカ軍基地が置かれ,また,米ソ間の核軍拡競争のなかで,日本はアメリカの「核の傘」(アメリカの核抑止力)のなかに自らの身を置くことになった。この政策の是非をめぐっては,1960年の安保反対闘争などに見られように,国論を二分する大きな政治問題となった時期もあったが,現在では,自衛隊の存在とともに既成事実化してしまっている面がある。ただ,安保条約の実際の運用には,いくつかのこくぜ問題点が指摘できる。日本が核兵器について国是としてきた「持たず,作らず,持ち込ませず」の非核三原則に対しては,アメリカ軍による核兵器の持ち込み疑惑がたびたび指摘されてきた。また,在日アメリカ軍の駐留経費の負担をめぐっては,「思いやり予算」による日本の肩代わりが規模を拡大させながら実行されてきた。さらに,基地の集中する沖縄を中心に,アメリカ軍の引き起こす事故や事件にこうむよって地域住民が被害を被るたびに日米地位協定のあり方が問題となってきた。武器の輸出を原則禁止してきた武器輸出三原則に代わり,一定条件に沿う輸出を認める防衛装備移転三原則が2014年に閣議決定された。これらの問題は,憲法の平和主義の原則を揺るがし,冷戦後の日本の安全保障のあり方の議論と重なって,今日でも大きな政治課題となっている。新しい動き/視点沖縄と軍事基地/沖縄の米軍基地の問題が新しい局面をむかえている。2014年11月の知事選挙で,普天間基地の辺野古(=県内)移設問題をめぐって,県外か国外への移設を主張する候補者が,県内移設を認めた現職に10万票近くの大差をつけて当選したのである。沖縄県民の意志が,すでに辺野古沿岸での工事準備に着手した日本政府の意向と真っ向から衝突した形だ。沖縄がことさらに背負わされる基地負担問題をとおして,日本の民主主義自体が問われている課題でもある。第1編現代の政治