ブックタイトル資料政経
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高校政治経済資料集
4.何が格差を生み,格差は何をもたらすのか2015/巻頭特集──61格差をもたらしたものいま日本社会では急速に格差が拡大している。もちろんこれは人為的にもたらされたものである。具体的な政策をいくつかあげれば,まず,「労働者派遣法」があげられる。1986年に施行された同法は,改正を繰り返しながら派遣対象となる職種を段階的に拡大し,2003年には製造業にまで及んだ。職場において,正社員が派遣社員やアルバイトなど非正規雇用社員に置き換えられるその過程で,労働者の賃金水準は全体として引き下げられていった。世界経済のグローバル化のなかで,競争力を確保しようとした大企業の利益が優先された形だ。税制の変更も格差の拡大に大きく影響を及ぼしている。1989年には消費税の導入があった。当初3%で始まった同税は,97年に5%,2014年には8%になり,近々10%に引き上げられようとしている。財政危機の回避のためには避けられない増税とされているが,消費税の逆累進性(? p.288)を考えれば,負担を国民大し衆に強いるものであることは間違いない。一方で,下表「所得税率の変遷」が示すとおり,高所得者を中心に所得税の減税が進められてきた。低所得者から多くを取り,富裕層に多くを残す税制改正が段階的に進行してきた現実がある。その他,さまざまな規制緩和策の展開のなかで,大企業に有利な条件が作りだされ,それによって格差社会が形成されてきた。その全体像はいまや誰の目にも明らかになりつつあると言えるが,それは「格差社会」というより「階級社会」と呼ぶ方がふさわしいものになってきている。2015年度の税制改正で,子や孫にまとまったお金を無税で生前贈与できる一括贈与制度が拡充される見通し。この制度は富裕層の優遇につながるもので,金融資産のない家庭には無縁。資産がある家庭の子どもとそうでない子どもの格差がより拡大し,格差が固定化してしまう恐れがある。2格差は社会を変質させる社会の一部に富裕層を形成することで経済の発展をもたらそうする理論をトリクル・ダウンしたた効果という。水が下に滴り落ちるように,富裕層の消費のおこぼれが他の階層にも広がるという考えである。しかし,この理論が導いたアメリカ社会は,中間層が没落し,1%の富裕層と99%の非富裕層へと分裂する傾向を強めた。そうした社会がこわ何より怖いのは,社会から一体感を奪うことであり,貧しい者や立場の弱い者に手をさしのべようとする,人として当然の規範意識が低下することである。*参考図書:橋本健二『「格差」の戦後史』(河出ブックス)●所得税率の変遷70%60% 60%50%50%40%37%40%40%30%30%30%33%20%20%20%20% 23% 15段階12段階6段階10%10.5%10.5% 10%10% 5段階10% 4段階5% 6段階1986年1987年1988年1989年1999年2007年~