ブックタイトル資料政経
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高校政治経済資料集
「学習の基本構造」を読む1.現代の政治体制democracyは,古代ギリシア語のdデemos(モス人民,民衆)のkクラティアratia(支配)に由来するが,民主政治は国民の意思に基づく政治であり,代表者を通さないで国民が直接に政治のあり方を決定する直接民主制が理想である。しかし,社会が複雑化し,また広大な領域と膨大な人口を有する現代の国家では実際上不可能であり,選挙を通じて代表者を選び,その代表者に権力の行使を委託する間接民主制(代議政治,議会制民主主義)が採用され,直接民主制は多くの国でリコール(国民解職),レファレンダム(国民投票),イニシアティブ(国民発案)などの形で補完的に行われているだけであべんぎてきる。なお,間接民主制は,直接民主制の便宜的な代替物というだけではない。討論を通して調整・妥協がなされ合意が形成されるという長所があり,間接民主制の原理として,国民代表の原理,審議の原理,監督の原理をあげることができる。議会制度の形態としては一院制と二院制があり,多くの国は一院制を採用しているが,先進国では二院制を採用している国が多い。現代の民主政治体制は,議会制民主主義のもとに権力分立制をとっているが,議会(立法権)と政府(行政権)の関係のあり方によって,イギリスにな型の行政権を担う内閣の存立が議会の信任を要件とし議会に対して責任を負う議院内閣制,厳格な三権分立を採用したアメリカ型の大統領制,半大統領制と呼ばれるアメリカ型の大統領制とイギリスせっちゅう型の議院内閣制の折衷型(フランス,ロシアなど)に大別される。なお,君主がいない国家(共和制)には一般に国家元首として大統領が存在するが,大統領がいる国がすべてここにいう大統領制ではなく,ドイツでは,大統領は議会議員と邦の代表で構成される連邦会議によって選出され,ほとんど権限がなく,議院内閣制に分類されている。権力分立制は自由主義の制度なので,社会主義国では権力を一つの機関に集中させる権力集中制(民主集中制)がとられてきた。現在では,中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国など数か国にとどまる。第3節現代の政治体制と各国憲法? 632.憲法の意義と分類近代国家における憲法は,フランス人権宣言16条が示すように,権力分立に基づく統治機構と国民の権利・自由の保障に関する規定を含んでいる。この二つの要素を含む憲法を,近代憲法・立憲主義憲法という。「権力者の行為をすべて憲法によって制限する」という考え方を立憲主義と呼んでいる。立憲主義憲法は,成文憲法の形をとっているが,それは,国家は自由な国民の社会契約によって組織され,その社会契約を具体化したものが憲法であるから,契約である以上それを文書の形にすることが望ましいと考えられたからである。イギリスは不文憲法の国といわれるが,それは,「憲法」の名を冠した文書(憲法典)が存在しないという意味であり,実質的意味の憲法の大部分は憲法慣習から成り,それに,議会法(1911)や人身保護法(1679)などの法律,マグナ・カルタ,権利請願,権利章典などの歴史的文書も加わってイギリス憲法を構成している。なお,ドイツにも「憲法」の名を冠した文書はないが,「基本法」の内容は他国の憲法に匹敵し,成文憲法である。一般に法の目的の一つは秩序であり,法的安定性が要請されるが,憲法は国家の根本法なので,一般の法律よりも法的安定性の要求が強い,そこで憲法改正の手続きは,一般の法律の立法手続き(法律の改正は,改正法を制定することによって行われる)よりも難しくなっているのが普通で,このような憲法を硬性憲法と呼ぶ。現在のすべての成文憲法は,国によって差はあるが,改正手続きが一般の法律の立法手続きより困難な硬性憲法である(?p.150)。なお,イギリスには憲法典がないので,憲法改正は一般の法律と同一の手続きで行われる。このような憲法を軟性憲法という。君主の権威に基づいて制定され君主主権主義を内容とする憲法を欽定憲法といい,大日本帝国憲法がその例である。これに対して国民主権主義を内容とする憲法を民定憲法という。日本国憲法の制定は,形式的には大日本帝国憲法の改正手続きによってすなわち欽定憲法の形で行われ,実質的にはGHQの主導的意思により制定されたが,国民主権主義をその内容とするので民定憲法といえる。新しい動き/視点民主主義の機能不全/2010年のチュニジアから始まった「アラブの春」の動きは中東での民主主義の進展を人々に期待させた。しかし,その期待はわずか数年で失望に変わった。同地域の大国であるエジプトでは軍事クーデターが起こり,シリア内戦は泥沼化して出口が見えない。それを許しているのは欧米諸国をはじめとする国際社会の利害である。民主主義に希望を託せないと判断した当該地域の若者のなかには,宗教を厳密に社会に適用する運動に走る者が出てくる。シリア・イラク地域で勢力を伸ばすISIS(「イスラム国」)は,民主主義が説得力を発揮できていない現代世界の象徴と見ることもできるのである。第1編現代の政治