ブックタイトル資料政経
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高校政治経済資料集
第2節近代民主政治の原理? 61事例研究近代民主政治の原理多数決と民主主義??多数決は正しいか民主主義的な意志の決定方法として多数決は広く普及している。なぜ多数決が採用されているのか。また,多数決は正しい結論を導き出す方法として果たして本当に有効な方法なのか。これらは,民主主義にかかわる重要な問である。多数決の正しさについての3つの説明◯第1の説明──自己決定の最大化自分のことは自分で決める。個人が尊重される社会では基本的な原則である。集団の意志を決める際にも,この原則を守るなら,出来るだけ多くの人の意志が尊重されるべきで,自分のことは自分で決める自己決定の最大化が目指されることになる。それに適した方法が多数決,しかも過半数を越える意見を全体の意志とする単純多数決である(全会一くつがえ致は,一人の反対でほかのメンバーの考えを覆すことが可能で,自己決定の最大化の原則に反する)。◯第2の説明──すべての人を公平に扱う方法この説明も個人の尊重を基本にしているが,ここでは決定の手続きの公平さに着目する。ある集団の一員として認められている以上,その人の意見は他のメンバーの意見と同じ重みを持つものとして扱われなければならない。この考え方から導かれる決定方法は,やはり単純多数決ということになる。◯第 3の説明──正しい結論を導き出す方法第1と第2の説明に従っても,それによって出された結論や決定の中身が本当に正しいか,その集団を本当に望ましい方向に導くかは分からない。多数派の人々の意見が間違っている可能性はあるし,手続きの公平さは結論の正しさを保障しない。第1と第2の説明は実はそのことを前提としている。ところが,第3の説明は多数決こそが,集団の正しい答えを見つけるための有効な方法だと主張する。フランスのコンドルセ(1743?94)はひとつの定理を提起した。正しい答えを出す確率(正答率)が平均して2分の1を越える能力を持った者たちが集団を構成する場合,単純多数決が正しい答えを導き出す確率は,構成員の数が増えれば増えるほど高くなる。逆に,正答率が平均して2分の1を下回る能力しか持たない者たちの集団では,単純多数決が正しい答えを出す確率は,数が増すほど低くなる。このコンドルセの定理の立場からすれば,教育水準が一定の高さにあり,情報開示などが的確になされている集団における多数決は,正しい答えを出すために有効な方法だということになる。多数決と民主主義第1と第2の説明が,正しい答えの存在を必ずしも前提していないのに対して,第3の説明は正しい答えの存在を前提としている。この違いは,多数決を基礎としている民主主義についての見方に密接に関係する。第3の説明の立場からは,民主主義は正答を導き出すための制度だといえるし,第1と第2の立場からは,民主主義は集団内部の利害関係を調整するための制度だということになる。もともと民主主義の理解は多様であるし,多数決を採用する説明もどれかひとつが正しいとは言えないのである。大切なのは,多数決や民主主義の限界を知ることである。第3の説明が成立するための条件はすでに見たが,集団が深刻な対立を抱えている場合の多数決の強行は集団に混乱をもたらす。また,多数決によって成立した法律やルールであっても,それが人権を否定する内容であれば決定は覆されるのである(→立憲主義および違憲立法審査権)。※長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす』(ちくま新書)を参照(加藤良平・講談社刊)第1編現代の政治