ブックタイトル資料政経

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概要

高校政治経済資料集

60 ?第1章民主政治の基本原理2国民主権と権力分立●1●リンカーンのゲチスバーグ演説(抄)●2●近代の三権分立論議会〔ロック〕〔モンテスキュー〕国王議会(抑制)(均衡)国王第1編資料を読む1863年7月,南北戦争における最大の激戦がペンシルバニア州のゲチスバーグで展開され,南北全軍の4分の1の軍人が倒れたといわれている。同年11月19日,戦没勇士をまつる国有墓地設立の式典が行われたが,その献納に際して行われたリンカーンの演説である。この演説は,南北戦争が民主主義を維持するための戦いであることを強調したもので,演説の最後の一句“The government of the people, by thepeople, for the people”は,国民主権に基づく民主政治の原理を簡潔に表現したものとして有名である。現代の87年前,われわれの父祖たちは,自由の精神に政はぐくまれ,すべての人は平等につくられているとい治う信条にささげられた新しい国家をこの大陸に打ち建てました。現在,われわれは一大国内戦争のさ中にあります。これによりその祖国が,あるいはまた,ささこのような精神にはぐくまれ,このように献げられたあらゆる国家が,永続できるか否かの試練を受けているわけであります。ここで戦った人々が,これまでかくも立派にすすめてきた未完の事業に,ここで身を捧げるべきは,むしろ生きているわれわれ自身であります。??それはこれらの名誉の戦死者が最後の全力を尽くして身命を捧げた,偉大な主義に対して,彼らの後を受け継いで,われわれが一層の献身を決意するため,これら戦死者の死をむだに終らしめないように,われらがここで堅く決心するため,またこの国家をして,神のもとに,新しく自由の誕生をなさしめるため,そして人民の,人民による,人民のための政治を,地上から絶滅させないためであります。(高木八尺・斉藤光訳『リンカーン演説集』岩波文庫)立法権行政執行権司法同盟権*立法権裁判所裁判権*同盟権とは,戦争・講和・外交などを行う権力のこと。●3●モンテスキューの三権分立論▲モンテスキュー(1689?1755)フランスの思想家『法の精神』(1748年)執行権同一人物の手に,または,同一の官職団体の手に,立法権と執行権とが兼ねられる時自由は存在しない。……裁判権が立法権と分離していない場合もまた,自由は存在しない。この権が立法権と結合しておれば,市民の生命および自由に対する権力が恣意的なものとなろう。この権が執行権と結びついているとすれば,裁判官は圧制者の力を持ち得るであろう。もしもただ一人の人物,もしくは有力者であれ,貴族であれまた人民であれそれらの一団体だけがこれらの三権,すなわち法を作る権,公の議決を執行する権,並びに犯罪もしくは個人間の争訟を裁判する権を行使するとすれば,すべては失われるであろう。(根岸国好訳『法の精神』世界大思想全集5,河出書房新社)▲ゲチスバーグで演説するリンカーン資料を読む立法権の優位から三権の均衡へロックは,立法権,執行権の二権(対外的執行権ともいうべき同盟権を別に立てれば三権)に分けつつも,立法権の優位を説き,議会を通じて,執行権(国王)への抑制をはかる考えを示した。この考え方は,やがてイギリス型の議院内閣制の基礎となる。モンテスキューは,「すべて権力を持つ者はそれを濫用しがちである」という前提に立って,ロックの考え方を発展させ,立法権,裁判権(司法権),執行権(行政権)の三権分立を唱えた。ロックが立法権を強調したのに対し,三権が独立の機関に属し,対等の関係にあって相互に抑制して均衡を保つべきだと強調した(2・3)。この理論は,近代国家の政治機構上の基本原理となっている。