ブックタイトル資料政経

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概要

高校政治経済資料集

●4●国家に関する学説第1節国家と法? 51学説・理論代表的主張者その主な内容起ジェームズ1世(英)国家は神の意思に基づいて成立し,王の権力は神から授かったもの源神権説R.フィルマー(英)であるとし,王は臣民に対して絶対権をもっていると説いた。に(王権神授説)『父権論』(1680)王権神授説は,絶対王政を正当化する役割を果たした。よJ.ロック(英)国家は,成員の合意に基づいて成立するものであり,権力は人民にる社会契約説J.J.ルソー(仏)あり,政府は人民の権力の受託者である。(?次ページ参照)分類F.オッペンハイマー(独)国家の起源は,有力な民族あるいは階級が,他の民族や階級を征服国家征服説『国家論』(1905)して形成したとする説。ブルンチュリ(独)『国法汎論』(1852)国家有機体説H.スペンサー(英)『社会学原理』国(1876~96)家のG.イェリネック(独)国家法人説『一般国家学』(1900)本質によ階級国家論る分多元的国家論類(政治的多元主義)的絶対主義国家君主に無制限な権力を付与した国家。17~18世紀のヨーロッパの国家。分近代市民国家市民階級(ブルジョアジー)が権力を握り,政治的には民主主義を基本原理とし,経済的には(資本主義国家)類自由な経済活動を基本原則とする。市民革命後の欧米諸国。社会主義国家搾取なき社会を理念とし,プロレタリアートの支配する国家。旧ソ連・東欧諸国,中国。機能的分類F.エンゲルス(独)『家族・私有財産および国家の起源』(1884)マルクス(独)・エンゲルス『共産党宣言』(1848)H.J.ラスキ(英)『政治学入門』(1931)国家を一種の有機体とする説で,プラトンに始まり,19世紀に盛んであった。スペンサーは,国家を生命ある有機体とみなし,その成員である個人は有機体における細胞にあたり,全体の機能を分担するに過ぎないとする。「元首」ということばはこの説に基づく。国家は,法的に考えると一つの法人,したがって意思を有し,権力の主体であるという説。君主,議会,裁判所は,国家という法人の「機関」である。君主に主権があるというのは,君主が国家の最高の意思決定機関の地位を占めるということにほかならない。これを日本にあてはめたのが天皇機関説(?p.78)である。国家はいつの時代でも,支配階級が生産物を独占し搾取することを正当化し擁護するためにつくりだした「暴力的な支配装置」であるとした。近代国家は資本家階級による労働者階級を支配・搾取するための道具である。労働者が権力を握った共産主義社会が到来すれば,国家は消滅する。国家は,教会・企業などさまざまな社会集団の一つに過ぎず,諸集団の利害や機能を調整する役目をもつ点で相対的な優越性をもつに過ぎないとする説。絶対化される傾向にある国家権力を抑制し,その他の社会集団の自由を確保しようとする理論であった。歴奴隷制国家生産労働を担当する奴隷と,その所有者を基本的階級とする国家。古代ギリシャやローマ。史封建制国家土地を所有する領主と,これに隷属する農奴とを基本的階級とする国家。中世のヨーロッパ。夜警国家(消極国家)福祉国家(積極国家)資本主義の初期に,国家の機能を個人の自由な活動に干渉せず,国防や治安維持など最小限度の警察的任務を負うのみにとどめることを理想とした国家。自由国家ともいう。「夜警国家」はラッサール(19世紀のドイツの社会主義者)が軽蔑的な意味をこめていったことば。資本主義経済の弊害を調整,解決するために完全雇用や社会保障政策の推進によって,国民の福祉に積極的に奉仕することを理想とする国家。19世紀の消極国家は,20世紀にはいるとじょじょに積極国家へと変貌した。社会国家ともいう。福祉国家は主にイギリスで,社会国家の語は主にドイツで用いられたことばである。第1編現代の政治資料を読む国家の多様性国家は,支配・被支配の発生とともに生まれ,形態・本質・機能ともに様々に変化してきた。国家に関する学説も多様である。起源による分類は,国家統治の正当性を主張の根底においており,その代表は神権説と社会契約説であり,社会契約説は今日の国家の基礎理論となっている。本質による分類の国家法人説は国民主権論に対抗する国家主権論の立場である。階級国家論は,究極的には国家を否定する立場である。機能的分類は,国家が国民生活に対してどのような役割を果たしているかに着目したもので,今日では,国民生活の安全を守るだけでよいとする夜警国家論から,積極的に国民の福祉の向上をはかるのが国家の役割であるとする福祉国家論に移っている。