ブックタイトル資料政経

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概要

高校政治経済資料集

50 ?第1章民主政治の基本原理1政治と国家●1●主権の概念主権の概念は多義的であるが,一般に,次の三もちつの異なる意味に用いられる。(1)国家権力そのもの立法権・行政権・司法権を総称する統治権とほぼ同じ意味で,日本国憲法第4 1条に言う「国権」がそれにあたる。ポツダム宣言8項「日本国ノ主権ハ,本州,北海道,ならびわれら第1九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セ編ラルベシ」という規定にみられる。現(2)国家権力の属性としての最高独立性国家権代の力の最高独立性を意味する主権は,憲法前文3政項で「自国の主権を維持し」という場合の主権が治その例であるが,そこでは国家の独立性に重点が置かれている。(3)国政についての最高の決定権国の政治のあけんいり方を最終的に決定する力または権威という意味であり,その力または権威が君主に存する場合が君主主権,国民に存する場合が国民主権と呼ばれる。憲法前文1項で「ここに主権が国民に存することを宣言し」という場合の主権,および1条で「主権の存する日本国民の総意」という場合の主権がこれにあたる。(芦部信喜『憲法』岩波書店)●2●君主主権論と国民主権論J.ボーダン(1530~96,仏)『国家論』はじめて主権ということばを使い,それが最高の国家権力であること,絶対的恒久的な権力であ君ることを明らかにし,神の意志である神法と自然主法のほかはいかなる世俗的な権威にも服さないものとした。絶対君主がこのような主権の担い手で主あるとした。絶対王政を理論づけた。権T.ホッブズ(1588~1679,英)『リバイアサン』論「万人の万人に対する闘争」という自然状態を避けるために,人民は自然権を個人または合議体に委譲する。その結果,委譲された者(主権者)の主権は絶対,無制約の最高権になるという。J.ロック(1632~1704,英)『市民政府論』国人民の自然権を全面的に委譲せず,政府は人民の信託にこたえ,自然権を保障する義務を負うと民した。国家権力の正当性を人民の信託に求め,君主主権力の制限を根拠づけた。権J.J.ルソー(1712~78,仏)『社会契約論』論人は生まれながらにして自由であり,人間を拘束する国家権力は成員相互の社会契約によって生ずる。主権とは,人民全体の利益を追求する一般意志に基づく作用であるとし,人民主権論を主張した。●3●権力(支配)の正当(正統)性?マックス・ウェーバー(1864 ?1920,独)の分類「昔から存在する秩序と支配権力との神聖性を信ずる信念」(ウェーバー『支配の社会学』)に基づいて行われる支配をいう。たとえば,血統ないし家系の由緒に基づいて支配の正当性を伝統的支配こうそこうそういくん獲得し,「皇祖皇宗の遺訓」といった祖先から伝えられた掟やしきたりに従って支配が行われる。君主制や天皇制がその例。カリスマ的支配合法的支配支配者の持つ天与の資質(カリスマ)に対する帰依によって成立する支配。「永遠に新たなるもの,非日常的なもの,未曽有なるものと,これらのものによって情緒的に魅了されることが,この場合,個人的帰依の源泉なのである。もっとも純粋な型は,予言者,軍事的英雄,偉大なデマゴーク(煽動者)の支配である」(ウェーバー,同上書)。指導者のカリスマ性に対する帰依に服従の基礎をおいている。古くは,旧約聖書に描かれたユダヤ民族の指導者モーセ,近代ではヒトラーの一党独裁やスターリンに対する個人崇拝がこの典型例である。形式的に正しい手続きで定められた制定規則に基づいて支配が行われることをいう。選挙もしくは任命によって構成された支配団体が官僚機構と行政官僚を通じて,法律や規則に従って,成員に対して支配するシステムのことである。人ではなく制定規則に服従の基礎をおくもので,近代国家は主としてこの側面に正当性の根拠をおいている。(堀江湛『政治学のことば』日本放送出版協会ほかによる)資料を読む政治の典型?国家国家は,領域・人民・主権の三要素から成り立つが,「主権」は三つの意味で用いられる。国民主権・君主主権という場合には国内での政治の最高決定権をさし,主権国家という場合には対外的独立性を意味する(1・2)。国家は,法を定め,全人民を強制力をもって支配(統治)するが,いかなる権力もその支配の正当性に支えられなければならない。M.ウェーバーはこれを三類型に分類し,合法的支配が最も正当性をもつとした(3)。