ブックタイトル資料政経
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高校政治経済資料集
第6章司〔司法権と裁判所,特別裁判所の禁止,裁判官の独立〕第76条1すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。2特別裁判所は,これを設置することができない。行政機関は,終審として裁判を行ふことができない。3すべて裁判官は,その良心に従ひ独立してその職権を行ひ,この憲法及び法律にのみ拘束される。〔最高裁判所の規則制定権〕第77条1最高裁判所は,訴訟に関する手続,弁護士,裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について,規則を定める権限を有する。2検察官は,最高裁判所の定める規則に従はなければならない。3最高裁判所は,下級裁判所に関する規則を定める権限を,下級裁判所に委任することができる。〔裁判官の身分の保障〕と第78条裁判官は,裁判により,心身の故障のために職務を執だんがいることができないと決定された場合を除いては,公の弾劾ひめんちょうかいによらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は,行政機関がこれを行ふことはできない。法政治・経済便覧――用語解説第76条? 23下級裁判所高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・および簡易裁判所をいう。特別裁判所特殊の人,特殊の地域,特殊の事件に関する訴訟についてのみ裁判権を有する特別の系統の裁判所。明治憲法時代にあった,皇族間の民事事件などを裁判する皇室裁判所,軍人について裁判する軍法会議,外地(戦前の台湾や朝鮮)にだけ裁判権を持つ外地裁判所,行政事件についてだけ権限をもつ行政裁判所がこれである。終審それ以上は上訴できない,最終の裁判所の審理。第78条裁判官の懲戒処分職務上の義務違反,不行状などに対し裁判にかいこくよって行われ,その種類は戒告かりょうと過料である。憲法を読む・27司法権の意義(第76条)司法権とは,国会によって制定された法を,具体的な争訟に適用し,判断を下す作用である。しかし,同様に司法権とはいいながらも,その内容は国によって異なる。ドイツやフランスの大陸法系の国では,司法権は民事と刑事の裁判権のみを意味し,行政事件は行政権を行使する行政裁判所の所管とされ,司法裁判所の権限外とされた。これに対して英米法系の国,特にイギリスでは「法の支配」のもとで,あらゆる階級の者が民事と刑事のみならずすべての裁判権を管轄する司法裁判所に平等に服するとされ,行政権に対する司法権の優越が認められた。我が国では,明治憲法時代,司法裁判所以外に,行政裁判所がおかれ,他にも軍法会議等の特別裁判所が設けられていたが,日本国憲法ではすべて司法権は最高裁判所と法律の定める下級裁判所の司法裁判所に属するとされている。憲法を読む・28司法権の独立(第76,78条)裁判の公正を確保するためには,裁判官がその職務かんしょうを行うに際して他からの干渉を受けず,法にのみ従い独立して裁判が行われねばならない。明治憲法時代もこの原則は1891(明治24)年の大津事件(?p.173)以来確立していたが,日本国憲法では詳細に規定された。すなわち,まず第76条3項で「その良心に従ひ独立してその職権を行ひ,この憲法及び法律にのみ拘束される」と裁判官の職権行使の独立(裁判官の独立)を規定した。これは,国会や内閣などの他の国家機関による干渉はもとより,政党や労働組合などの社会的勢力からの干渉を禁ずるばかりでなく,司法部内の指示,命令もまた排除される。しかしこれは,裁判への批判も禁ずるということではなく,裁判官が良心に従い独立して裁判を行うことが不可能になるような干渉を禁止する趣旨である。なお,司法部内での干渉が問題となっひらがしょかんたものに平賀書簡事件(? p.173)がある。そして,裁判官の職権の独立を確保するために,第ひめん78条で,裁判官が罷免される場合を,裁判により心身だんがいの故障のために執務不能と決定された場合と,弾劾裁おおやけ判所による「公の弾劾」による場合とに限定し,さらに裁判官の懲戒処分を行政機関が行うことはできないと定めて,裁判官の身分を保障し,第79条6項と第80条2項で裁判官の報酬の保障を定めて身分保障を裏付けている。さらに,立法権や行政権からの独立を確保するために,最高裁判所には,国会からの介入を排除するために規則制定権(第77条)が,内閣からの介入を排除するために司法行政権が認められている。しかし,司法権の独立は裁判官の独善を許すものではないから,憲法は,裁判の公開,弾劾裁判制度,国民審査制度という国民による裁判と裁判官に対する監視の制度を定めている。