ブックタイトル資料政経

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概要

高校政治経済資料集

144 ?第2章日本国憲法の基本的性格●7●環境権??大阪空港公害訴訟●8●個人情報保護法〔2003(平15).5・法57〕【事件の概要】大阪空港に発着する航空機の騒音,振動,排気ガスなどの公害に苦しむ住民272人が,「環境権」に基づいて,同空港の設置管理者である国を相手に,夜間(午後9時から翌朝7時まで)の飛行の差止めと,過去・将来の損害賠償の支払いを求めて提訴した。【裁判の経過と裁判所の判断】●控訴審・大阪高裁判決(1975.11.27)第1「環境権の意義は,被害が各個人に現実化する以前編において環境汚染を排除し,もって人格権の外延を守る現ことにあるというのであるから,判断の順序としては,ま代のず人格権に基づく主張の当否を判断すべきもの」と解政し,「本件空港の供用によって生ずる航空機の騒音等は,治原告ら全員に著しい精神的苦痛と生活妨害をもたらし,さらに身体被害をも一部の者にはすでに与え,他の者をさらも同様の危険に曝しているものと認められるのであるから,原告らの人格権は侵害されている」ものと認定,夜9時以降の飛行禁止を命じた。●上告審・最高裁(大法廷)判決(1981.12.16)夜間離着陸の差止めについては,空港をどう使わせるかは運輸大臣の権限に属し,差止め請求は「(運輸大臣の)航空行政権の行使の取消変更ないしその発動」などを求めることになり,民事上の請求としては「不適法」であるとしてしりぞけた。また,損害賠償については,「空港の使用につき公共性ないし公益上の必要という理由により……住民こうむに対してその被る被害を受忍すべきことはできず」として,過去の損害分については請求を認めたが,将来の分については請求を棄却した。(『朝日新聞』1981.12.16)第1条〔目的〕この法律は,高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ,個人情報の適正な取扱いに関し,基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め,国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに,個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより,個人情報の有用性に配慮しつつ,個人の権利利益を保護することを目的とする。第2条〔定義〕1この法律において「個人情報」とは,生存する個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。個人情報保護法は,個人情報の不正流用や,個人情報を扱う事業者のデータ管理の徹底を求めることを趣旨とした法律である。適用の対象となるのは,一定数以上の個人情報を取り扱う事業者と行政機関となっている。この法律によって,本人の了解がないまま,個人情報を流用したり売買,譲渡したりすることは規制される。多くの従業員がいる企業,大量のカルテをもつ医療機関など,個人情報をデータベース化する事業者は,第三者にその個人情報を提供する際は,利用目的を本人に知らせ,了解を得なくてはならない。また不正流用防止のための管理という義務もある。これを守らない場合は事業者に刑罰が科されるというしくみであるが,それにはあくまで本人からの苦情や訴えが必要であるため,実効性があるかどうかを疑問視する声もある。(土屋和恵『図解でわかる日本の政治』)資料を読む回避される環境権の司法判断大阪空個人情報保護法2003年個人情報保護法が成立し,2005港公害訴訟(7)は,環境権の主張に基づく公害裁判の代表的なものである。裁判では,環境権・人格権の認否が焦点となった。二審判決は,環境権を直接判断することは避けたが,憲法13条を根拠に人格権を認め,差止請求をはじめ原告の主張を全面的に認めた。これに対して,最高裁判決は,環境権には触れないまま,差止請求は行政権への介入になるとして却下した。この判決は,その後の公害差止め訴訟年4月施行された。情報化時代とIT化の進展に伴って,行政や民間企業による個人情報の漏えい問題が頻繁となってきた(? p.441)。これは個人のプライバシーの権利を侵害する大きな問題であり,この法律は,個人情報を取り扱う業者に個人情報の適切な取り扱いを義務づけるために制定された。適用の対象として報道機関を含めるかどうかが問題となったが,報道機関や学術研究機関は除外されている(8)。の先例となっている。