ブックタイトル資料政経
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高校政治経済資料集
●2●知る権利と報道の自由ろうえい??外務省秘密電文漏洩事件【事件の概要】沖縄の復帰に伴い米国側が沖縄に支払うべき軍用地復元補償のための400万ドルを日本が肩代わりして米国側に支払うという“密約”の極秘電信文が外務省に保管されていた。これを,西山毎日新聞記者がH外務省事よこみち務官(女性)から入手,それが72年3月社会党の横路おおやけきゅうちおちい議員によって国会で公にされ,政府は窮地に陥った。西山記者は国家公務員法(国公法)111条(秘密漏えいをそそのかす罪)違反,H事務官は同法100条(秘密を守る義務)違反で起訴された。【裁判の経過と裁判所の判断】●一審・東京地裁判決(1974.1.31)国公法で刑罰により漏えいを禁じている秘密について「具体的には一般に知られていないという非公知性のほかに公務の民主的,かつ能率的な運営を保障できなくなる危険性が存在することを必要とする」として,「秘密」をかなり厳格に解釈する立場をとり,「民主主義国家においては公務は国民による不断の監視を受けつつ行われるのが建前だから,この危険性を民主的コントロールの機能を残しつつ,公務の能率を一時優先させる必要がある場合に限られる」とした。そしてH事務官を有罪,西山記者を無罪とした。●二審・東京高裁判決(1976.7.20)「西山元記者のH元事務官に対する秘密文書持ち出しの依頼は,同事務官が自由な意志決定をする心のゆとりがない状態にあることを知りながら行われたもので,そそのかし行為にあたる」として,一審の無罪判決を破棄,同記者に懲役4月,執行猶予1年の判決を下した。●上告審・最高裁(小法廷)判決(1978.5.31)「報道の自由は,憲法21条が保障する表現の自由のうちでも特に重要なものであり,……取材の自由もまた,十分に尊重に値する」とした上で,この事件の西山記者の取材活動は,「当初から秘密文書を入手するための手段として利用する意図」で,H事務官に接近し,秘密文書を持ち出させたもので,「正当な取材活動の範囲を逸脱している」として,西山元記者の上告を棄却した。資料を読む軽視された「知る権利」外務省秘密電文漏洩事件(2)は,「取材の自由」と国家の秘密が対立し,取材のあり方が問われた事件である。一審の東京地裁は,記者の行為を報道目的のための「正当な行為」と認め無罪の判決を下した。これに対し,高裁と最高裁は,取材方法の違法性をとくに強調し,有罪の判決を下した。この判決に対しては,国民の知る権利の確保の前提となる自由な報道や取材の自由を軽視し,問題の本質を見失っているという批判があった。●3●アクセス権(反論権)第5節新しい人権? 141??「サンケイ新聞」意見広告事件【事件の概要】1974年の参議院選挙を前に,1973年に当時の自由民主党執行部は意見広告を計画し,朝日,毎日,読売,けいさい日本経済,サンケイ,東京の各新聞に掲載の申し入れをした。4紙は「特定の政党を非難するもの」などとして掲載を拒否したが,サンケイと日経はこれを受入れ,サンケイ新聞は1973年12月2日の紙面に掲載した。日本共産党は,この意見広告の内容が解答を求めるひぼう挑戦広告で,かつ共産党に対する誹謗・中傷に満ちているとして反論文の無料掲載を求めたが,拒否されたたきそんめ,この広告によって名誉を棄損されたとして,名誉回復の手段として反論文の無料掲載を求める仮処分を申請した。ところが,東京地裁が仮処分の申請を却下したため,共産党は,同一スペースの反論文の掲載を求めて提訴した。【裁判の経過と裁判所の判断】●下級審の判決一審の東京地裁(1977.7.14),控訴審の東京高裁(1980.9.30)のいずれも,現在の法律では,反論文の無料掲載請求権は認められない,名誉棄損は成立しないとして,原告の主張をしりぞけ,請求を却下した。●上告審・最高裁(小法廷)判決(1987.4.21)「憲法21条等のいわゆる自由権的基本権の保障規定は,国又は地方公共団体の統治行動に対して基本的な個人の自由と平等を保障することを目的としたものであって,私人間の関係については,適用ないし類推適用されるものではない」とし,「反論文掲載請求権は,これを認める明文の規定は存在しない」として,原告の主張をしりぞけた。さらに,反論権の制度について,「名誉あるいはプライバシーの保護に資するものがあることも否定し難い」としつつも,「新聞を発行・販売する者にとっては,……〔反論文の〕掲載を強制されることにちゅうなり,……公的事項に関する批判的記事の掲載を躊ちょ躇させ,憲法の保障する表現の自由を間接的に侵す危険につながる恐れも多分に存する」と述べている。そして,最後に,名誉棄損の不法行為は成立しないとして,上告を却下した。「プレスの自由」重視アクセス権は,マス・メディアが巨大化・独占化した現代において,「社会的問題について意見を持つ者が,マス・メディアにアクセス(接近)してこれを利用する権利」といわれ,反論権もその一つである。この判決(3)では,反論権の法的制度がないこと,憲法の人権保障規定は私人間の関係(この場合は政党と新聞社)を直接規定するものではないこと,名誉棄損にまではいたっていないことなどから,反論権を認めなかった。第1編現代の政治