ブックタイトル資料政経
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高校政治経済資料集
「学習の基本構造」を読む1.新しい人権日本国憲法は第14条以下において詳細な人権規定をおいているが,それらの人権は歴史的に国家権力によって侵害されることの多かった重要な権もうら利・自由を列挙したもので,すべての人権を網羅したものではない。社会の変化に伴い,新たに保障されるべきであると考えられる権利・自由が出てくる。その際,人権保障の憲法上の根拠となる規定が,憲法第13条の「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」(幸福追求権)である。幸福追求権は,憲法に列挙された諸権利を指すとともに,憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる包括的権利とも考えられ,これによって基礎づけられた個々の権利は,裁判上の救済を受けることができる権利であると理解されるようになった。これまで,新しい人権として主張されたものは,プライバシー権,環境権,知る権利,アクセス権,平和的生存権,自己決定権などをはじめとしにっしょうちょうぼうせいおんけんえんて,日照権,眺望権,静穏権,嫌煙権など多数にのぼる。ただ,最高裁判所が正面から認めたもしょうぞうのは,プライバシー権(肖像権も含む)ぐらいであるが,各地の公害訴訟などを通じての環境権,情報公開要求運動による知る権利など,市民の間には,新しい人権の主張は強く根づいている。これらの新しい人権のうち,プライバシー権は,うたげ消極,積極二つの意味があり,前者は『宴のあと』事件で東京地裁が「私生活をみだりに公開されない権利」として認め(1964),さらに『石に泳ぐ魚』事件で最高裁により認められた(2002)。後者は「自己に関する情報をコントロールする権利」という側面で,近年のコンピュータの発達とともに主張されている。2003年,個人情報の保護とそれを実現するための国と地方公共団体の責務を明確にし,個人情報を取り扱う業者の義務を定めた個人情報保護法が制定された。また,自己決定権とは,ライフスタイルをどうするか,安楽死や尊厳死など生命の終末を決めること,などについて公権力の介入を受けることなく自律的に決定することができるというもので,人格的自律権ともいわれる。なお第5節新しい人権? 139近年,患者の治療は患者の同意を必要とし,そのためには医師は患者にその治療法について説明する義務を持つというインフォームド・コンセントの考え方が広まっている。そしてまた,1999年に,国民の知る権利に資するために,中央省庁の行政文書を対象に情報公開法が制定され,2001年に施行されたが,同法に知る権利は明記されなかった。2.人権の国際的保障第二次世界大戦の反省から,人権の尊重が平和の維持と深くかかわっていること,人権の尊重が国際平和を維持するための基礎的条件であることが広く認識されるようになった。人権尊重のための国際協力が国際連合の目的の一つに掲げられたのもその表れである。国連は,1948年に世界人権宣言を採択し(採択日である12月10日は人権デー),1966年には,批准国を直接に拘束する条約である国際人権規約を採択した。これは,A規約(社会権規約),B規約(自由権規約)そしてB規約の選択議定書からなるが,とくにB規約の選択議定書は,B規約に規定されている権利を侵害された個人が,B規約によって設立された規約人権委員会に提訴する権利を認め,人権の国際的な保障を強くおし進めた。そしてまた,難民条約(1951),人種差別撤廃条約(1965),女子差別撤廃条約(1979),拷問禁止条約(1984),児童の権利条約(1989),死刑廃止条約(1989)などの人権にかかわる個別分野の条約も多数採択されている。さらに1993年にはウィーンで世界人権会議が開催された。そして1994年に国連人権高等弁務官が創設され,ジュネーブに国連人権高等弁務官事務所が置かれた。また,2006年には国連に人権理事会が設置された。個別的人権条約のうち女子差別撤廃条約をわが国は1985年に批准したが,これに伴い,父系主義から父母両系主義への国籍法の改正,男女雇用機会均等法の制定,高校家庭科の男女共修の実施,などが行われた。また,ヨーロッパ人権条約(1953発効)や米州人権条約(1978発効)など地域的な人権保障制度も人権の国際化に貢献し,「良心の囚人」の救済活動を行っているアムネスティ・インターナショナルなどの民間人権擁護団体の活躍も注目される。新しい動き/視点人権をめぐる動向/人権は社会状況を反映して,憲法で確定したものでも異なった観点からの読み直しがされる。25条の生存権がその典型だろう。1950年代に提訴された朝日訴訟(?p.131)では貧困解決が課題とされ,1970年代の公害訴訟(?p.423)では自然環境の確保を求める際の法的根拠となった。現在では1980年代以降の新自由主義政策を背景とした経済格差の拡大が新たな貧困を生み出し,ワーキングプアなど25条の真価が問われる現状にある。また,2013年には多くの反対を押し切って特定秘密保護法(?p.149)が成立した。国民の知る権利とそれを支えるマスメディアの報道の自由を脅かす法律の成立は,主権者である国民の権利をどう考えるか,政府だけでなく国民全体の人権感覚が問われている事態と言える。第1編現代の政治