ブックタイトル資料政経
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高校政治経済資料集
第4節基本的人権の保障? 137事例研究ハンセン病訴訟国に18億円賠償命令??「らい予防法」の改廃遅れりかくらい予防法(1996年廃止)による強制隔離政策で基本的人権を侵害されたとして,ハンセン病の元患者ら127人が国を相手取り一人当たり1億1500万円,総額146億円の賠償を求めたハンセン病国家賠償訴訟の判決で,熊本地裁は「遅くとも1960年には隔離の違憲おこた性は明白であった。厚生大臣は隔離政策を改める必要があったのに怠った過失がある」として国の責任を明確に認め,国に総額約18億円の支払いを命じた。隔離政策,誤りだった患者の隔離を柱とする国のハンセン病対策はらい1907年制定の法律「癩予防ニ関スル件」に始まり,96年のらい予防法廃止まで約90年に及んだ。判決は,まず,らい予防法にもとづく国のハンセンげんきゅういちじる病政策に言及。政策が患者の人権を著しく侵害し,差別や偏見を助長したことを明確に指摘した。そうした予防法の性質を踏まえ,隔離の必要性は最新の医学的知見にもとづき判断されるべきだとした。そのうえで,治療薬の発達や,56年以降,国際会議などの場で強制隔離が繰り返し否定されていたあことなどを挙げ,「遅くとも6 0年の時点で,同法のばっぽんてき改廃を含めた隔離政策の抜本的な変換をする必要があったのに怠った」として厚生大臣の職務行為に過失があり,国家賠償法上の違法性があると認めた。同法の隔離規定を廃止しなかった国会議員の不作為が争点となったが,「社会生活全般にわたって人権を制限した隔離規定は,60年には根拠を失っており,違憲性は明白だった」と指摘し,「隔離規定が存続することによる人権侵害の重大性と,司法的救済の必要性を考えると,国会議員の不作為について違法性を認めるべきだ」と述べた。損害の評価にあたって判決は,「患者個別の被害の立証を求めれば訴訟が長引き,真の救済は望めない」と指摘し,「一定の共通した範囲の被害を包括して賠償請求の対象とすべきだ」と判断した。こうした判断を踏まえて判決は,「社会内で平穏に生活することを妨げられた被害」を患者に共通した被害ととらえ,賠償額は初回入所時期と入所期間に応じて,800万円から1400万円の4段階に分けて認めた。国側は「違法行為から20年たてば賠償請求権がじょせき失われる」として民法の除斥規定の適用を主張したが,判決は「被害は新法の廃止まで継続的に発生しており,生涯にわたって受けた被害を全体としてしりぞ評価すべきだ」と述べて,退けた。(『朝日新聞』2001.5.11)ハンセン病政策と訴訟の経緯年ことがら1873ノルウェーのハンセンが,らい菌を発見1907法律「癩予防ニ関スル件」制定09現在の菊池恵楓園(熊本県)を含め,全国5カ所の公立療養所開設16療養所長に入所者への懲罰を認める懲戒検束権を付与31「癩予防法」制定。全患者が隔離対象に47日本国憲法施行。国内で治療薬プロミンの使用始まる48ハンセン病患者の断種,堕胎を認める優生保護法制定51参議院厚生労働委員会で療養所長三人が,刑罰を科しての強制収容を求める52 WHO(世界保健機関)が隔離政策の見直しを提言53入所者の反対闘争の中で「らい予防法」制定58第7回国際らい学会(東京)で,開放治療の方向を明確化60 WHOが差別法の撤廃,外来治療管理を提唱95第68回日本らい学会が「らい予防法」を黙認してきたことへの反省を表明96菅直人厚相(当時)が「らい予防法」見直しの遅れを謝罪「らい予防法」廃止98元患者13人が熊本地裁に第1次提訴99東京地裁にも提訴岡山地裁にも提訴2001熊本地裁の第1次訴訟判決で原告全面勝訴,政府控訴断念02厚生労働省と療養所非入所者及び入所者の遺族との間で和解が成立し,ハンセン病訴訟全面解決第1編現代の政治