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高校政治経済資料集

136 ?第2章日本国憲法の基本的性格事例研究デモ第1編ひん政治参加の権利??世界で頻2010年末のチュニジアにはじまり,エジプトなどアラブ各地に飛び火した反政府デモ。これによって中東全域は迷走状態に突入したが,デモは独裁体制下だけで起きているのではない。ギリシャでは緊縮財政政策に反対して4万人が,フランスでは年金改革に反対して100万人以上がデモに参加し,アメリカでは反格差のデモがウォール街を占拠した。日本では毎週金曜日夜に,国会・首相官邸前で反原発・脱原発デモが行われている。の問題だと思い込まされている。デモは本来,反体日本でも1970年頃までは盛ん制・反権力。だが,今のように余裕のない社会で現日本のデモ事情はどうか。さかのぼれば,終戦間代のもない1952年,血のメーデー事件があった。デモ政隊が皇居前広場に突入。警官隊との衝突で,デモ治隊の二人が死亡し,1,500人以上が負傷した。60年安保闘争では国会を包囲する10万人デモが起き,70年前後のベトナム反戦,全共闘運動も全国を揺るがした。……最近では,保守,右派系の「市民デモ」が目につたもがみばくりょうちょうせんかくく。田母神俊雄元航空幕僚長らが呼び掛けた尖閣諸島問題での抗議デモなどがそれだ。小沢一郎元民主党代表を支援することなどを目的とした「検察・きゅうだん検審(検察審査会)を糾弾するデモ」もあったが,ともに大きなうねりになっているとは言いがたい。過剰規制による誤った「違法」認識なぜ日本では,市民らによる街頭での意思表示が乏しいのか。昨年来,東京・新宿の繁華街を練り歩いて沖縄の基地問題を訴えている「新宿ど真ん中デモ」。数百人を集めるこのデモの実行委員,園良太さん(29)は「エジプトは若者が原動力だし,フランスでは中高生もデモをする。日本での参加者は高齢化したうえ,デモの掛け持ちで疲れてしまっている」うれと現状を憂える。園さん自身はアフガンなどの反戦デモを皮切りに「デモ歴」は9年。新宿でのデモの目的は,鳩山由紀夫前首相の辞任で沖縄報道が激減したマスメディアに代わって問題を訴え続けることと,民主党政権への抗議だ。なぜ若者にいまひとつ広がらないのか。「周囲から,社会問題は個人ぱつ発,日本はなぜ静か?は体制に順応した方が得策だと思ってしまう」。さらはばに,警察による過剰規制が,デモ参加を阻む一つの要因にもなっていると言う。園さん自身も08年,当時の麻生太郎首相の自宅を見学するツアーに参加し,公務執行妨害などの容疑で逮捕された。不起訴だったとはいえ,12日間もこうち拘置された。過剰な規制が「違法」というイメージを植え付けていると話す。……かりん若者の貧困問題に詳しい作家の雨宮処凛さんは,若者がデモを忘れて久しい原因をこうみる。「7 0年代の連合赤軍事件などで,若者が政治的に突出すると危険だというイメージが社会全体に広がった。事件を知らない若者世代も,親世代や社会からこうした価値観を無意識に植え付けられているのだろう」し加えて,「若者世代は周囲の空気を読むことを強いられ,周りに合わせることに懸命だ」と,社会に抗議することへの恐れも一因とみている。(『東京新聞』2011. 2. 3)▲脱原発を訴えるデモと群衆(東京・新宿)