ブックタイトル資料政経

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概要

高校政治経済資料集

第4節基本的人権の保障? 133▲検定「違憲」を報ずる新聞(杉本判決,1970.7.17)3判例家永教科書訴訟??教科書検定と学問の自由,教育権▲検定「合憲」を報ずる新聞(最高裁判決,1993.3.16)【事件の概要】高校用教科書『新日本史』を執筆してきた家永三郎氏(当時東京教育大学教授)は,1962年に同書五訂版検定申請を行ったところ,63年に文部大臣は検定不合格の判定をしてきた。そこで,若干の修正をして再び申請したところ,今度は翌64年,300項目に及ぶ修正意見を付した条件付き合格処分となった。家永氏は,この検定は,憲法の保障する学問,思想,表現の自由の侵害であり,教育を受ける権利,検閲の禁止にも違反するとして,国家賠償請求訴訟を起こした(1次訴訟)。その後,6 7年には不合格処分の取り消しを求める訴訟(2次訴訟),84年には80 ? 83年度の検定に対する国家賠償請求訴訟(3次訴訟)を起こした。【家永教科書訴訟の経緯】1次訴訟2次訴訟3次訴訟対象1962.63年度検定1966年度検定1980-83年度検定請求内容国家賠償不合格処分取り消し国家賠償提訴年月65年6月67年6月84年1月74年7月70年7月89年10月「高津判決」「杉本判決」「加藤判決」一審家永氏一部勝訴家永氏全面勝訴家永氏一部勝訴東京地裁(制度,運用は(制度自体は違憲で(制度・運用合憲だが,裁量はないが,不合格処は合憲だが裁逸脱あり)分は違憲)量逸脱あり)86年3月75年12月(差戻審)93年10月「鈴木判決」「畔上判決」89年6月「川上判決」二審家永氏敗訴家永氏一「丹野判決」家永氏一部勝訴東京高裁(制度,運用は部勝訴家永氏敗訴(制度自体は合憲で,裁量権(憲法判検定基準改合憲だが3か所逸脱もなし)断せず)訂で,訴えの検定に違法)上告審93年3月82年4月の利益なし97年8月最高裁上告棄却高裁へ差戻【確定】家永氏一部勝訴(『朝日新聞』1993.3.16,ほかより作成)▲検定「合憲」を報ずる新聞(最高裁判決,1997.8.29)【2次訴訟・一審東京地裁判決】(1970.7.17)「憲法26条……は,国民一人一人にひとしく教育を受ける権利を保障し,その反面として,国に対し右の教育を受ける権利を実現するための立法その他の措置を講ずべき責務を負わせたものであって,国民とくに子どもについて教育を受ける権利を保障したものということができる。……その責務を果たすために国家に与えられた権能は……教育を育成するための諸条件を整備することであると考えられ,国家が教育内容に介入することは基本的に許されない」とし,「本件不合格処分は教科書執筆者の思想(学問的見解)内容を事前に審査するものというべきであるから,憲法21条2項の禁止する検閲に該当し,同時に,……記述内容の当否に介入するものであるから,教育基本法10条に違反する」。【3次訴訟・上告審最高裁判決】(1997.8.29)教育権については,国は「必要かつ相当と認められる範囲において,子供に対する教育内容を決定する機能を有しており……必要かつ合理的と認められる規制を施すことは禁止されていないから……教科書の検定は,憲法26条(教育を受ける権利),13条(個人の尊重と公共の福祉),教育基本法10条に違反しない」と検定は合憲とした。さらに,検定によって教科書執筆者の表現の自由,研究発表の自由が制限される面があるにしても,それは教科書という特殊な形態での表現,発表を制限するにすぎず,合理的で必要やむを得ない限度のものというべきであるから,憲法21条(表現の自由),23条(学問の自由)に違反しない,と判示した。ただし「731部隊」記述に関し裁量権の逸脱があった。第1編現代の政治資料を読む国家による教育内容への介入家永訴訟は,文部省による教科書検定制度やその運用が,現行の憲法体系上妥当なものがどうかを,問うものであった。2次訴訟の杉本判決は,国家(検定)が教育内容に介入することは違憲であるとの判断を下した。しかし,上級審に及ぶにしたがって,国の教育内容への介入を容認する色合いを強め,1次訴訟の上告審最高裁判決は検定制度およびその運用を合憲とし,家永氏の上告を棄却した。さらに,3次訴訟の二審・上告審では,検定制度は合憲だが,「南京大虐殺」など計4か所の検定には違法があったとして,国に損害賠償を命じた。