ブックタイトル資料政経

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高校政治経済資料集

第1編132 ?第2章日本国憲法の基本的性格●4●教育を受ける権利と教育の自由●関連憲法条文第26条〔教育を受ける権利,教育を受けさせる義務〕1すべて国民は,法律の定めるところにより,その能力に応じて,ひとしく教育を受ける権利を有する。2すべて国民は,法律の定めるところにより,その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は,これを無償とする。現1教育の権利・義務の構造代の政義務権利治就親権者学後見人子雇用者要女求教育の権利就学させる義務教育の機会均等五労二学六二働・校の財入障・一害差産学基九教児五・試教三別・験育七準育九不家の可保条法条法能庭能障教育施設要求義奨学制度拡充国義務教育確立務教育立法(『口語六法全書憲法』自由国民社より作成)2判例旭川学力テスト事件??教育権はどこにあるか?国家と国民【事件の概要】文部省の指示で,1961年に,中学校での一斉学力テストが全国的に実施されるようになった。同年10月2 6日旭川市永山中学校で,学力テストの実施を実力で阻止しようとした被告人らが,建造物侵入,公務執行妨害罪で起訴された。一審(旭川地裁),二審(札幌高裁)は,本件学力テストを,教育行政機関による教育への不当な介入で教育基本法10条に違反するとして,公務執行妨害罪の成立を否定し,被告人らの一部有罪,一部を無罪とした。【最高裁(大法廷)判決の要旨】(1976.5.21)最高裁は,原審判決を破棄して有罪判決を下した。判決理由のなかで,最高裁は,国家の教育権論と国民の教育権論の両方を「いずれも極端かつ一方的であり,そのいずれをも全面的に採用することはできない」とした上で,「……国は,国政の一部として広く適切な教育政策を樹立,実施すべく,また,しうる者として,憲法上は……必要かつ相当と認められる範囲において,教育内容についてもこれを決定する権能を有するものと解せざるをえ」ないとした。スポット外からみた日本の教育政策??OECD教育調査団の報告OECD調査団は,日本の教育行政制度は,中央集権と画一化に問題があると指摘している。調査は1970年代のもので,その後いくぶんの制度の変更はあったが,その本質は変わっていない。文部省は日本の教育内容に対して,非常に強力な公的支配力をもっている。その点では,世界においてもっとも中央集権化された官庁の一つかも知れない。文部省は,次のような権限をもっている。(1)各教科における学習指導要領を決める権限をもっている。また,その権限は詳細な点まで指示するようになっており,教育課程に変化をあたえようとする教師の自由は制限されている。(2)使用されるすべての教科書に対して,検定認可の権限をもっている。この権限は,歴史のような教科にかかわる場合に,画一的な政治的価値を押しつけるという危険をはらんでいる。また近代社会の必要にこたえようとするなら,教育の内容や方法を改善するためにいろいろな工夫や実験を行わねばならないが,中央集権とその画一主義はこうしたことの大きな妨げになっている。このようにして教育内容のなかの価値に関するものを支配しようという考えは,純粋に教育的な立場からみると,たいへん大きなマイナスをもたらすことになる。(深代惇郎訳『日本の教育政策』,杉原泰雄『資料で読む日本国憲法・上』より引用)資料を読む国民の学習権と国および保護者の義務憲法26条は,教育を受ける権利を社会権の一つとして位置づけ,教育の機会均等を保障している。国民すべてが等しく,各自の能力に応じた教育を受けられるように,国は条件整備をすべき義務を負っており,保護者は子女(子どものこと)を就学させる義務をもっているという意味である(1)。教育権(教育内容の決定権)の所在については,「国家教育権」説と「国民教育権」説とがある。旭川学力テスト裁判最高裁判決では,形の上では両者の折衷的見解をとっている(2)が,「教育内容に対する……国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請される」としている。