ブックタイトル資料政経

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概要

高校政治経済資料集

第1編現代の政治130 ?第2章日本国憲法の基本的性格5社会権的基本権●1●生存権の保障●関連憲法条文第25条〔生存権,国の社会的使命〕1すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。(最低生活(事故)以(事故)(事故)上)(国こ(防貧施策)健康で文化的なのの(救貧施策)裁範最低限度の生活量囲()内最で低生活以下)(浦部法穂『入門憲法ゼミナール』実務教育出版)(具体的保障水準)●2●「食えない人間は自由ではない」近代市民憲法は,封建体制を否定して資本主義つく体制を創り出すために,財産権を中心とする自由権の保障に力をいれた。しかし,いくら自由権が保障されても,それを行使するために不可欠な生活基盤もちを欠いている場合には,それは絵にかいた餅でしかない。生活に追われて,本を買い学校に通う余裕をもっていない者にとっては,学問の自由は事実上無縁の自由となる。それだけではない。……保障されている自由権が社会的経済的に弱い立場にある者の生活を破壊するようにさえもなる。かつて,契約の自由を含む経済活動の自由の保障は,低賃金長時間労働をもたらし,賃労働者を「この世の地獄」のおとしい状態に陥れた。現代市民憲法は,このような事態に積極的に対処しようとして,社会的経済的強者の大きな経済活動の自由を積極的に制約することを認めると同時に,社会的経済的弱者に社会権を保障し,人間らしい生活を確保しようとしている。日本国憲法も,積極的にこのような配慮をしている。その意味で,日本国憲法は,典型的な現代市民憲法の一つということができる。なお,明治憲法は,社会権についての保障を全面的に欠いていた。(杉原泰雄『資料で読む日本国憲法・上』岩波書店)●3●主な生存権訴訟●「朝日訴訟」は,次ページの判例を参照訴訟名訴訟の内容判決内容視力障害者で母子世帯の堀木文子さんが,障害者福祉年金等と1982年7月,最高裁は,憲法25条は国の堀木訴訟第二次藤木訴訟牧野訴訟宮訴訟却下処分の取り消しを求めた訴訟。生活保護申請の手続きをめぐる訴訟で勝訴した藤木イキさんが,この訴訟の裁判費用に対する生活保護を求めて起こした訴訟。牧野亨さんが,老齢福祉年金を夫婦で受給すると,国民年金法の規定で支給額が削られるのは,憲法14条(法の下の平等)に反するとして起こした訴訟。宮公(みや・ただし)さんが,恩給など公的年金を一定額以上受けている老人に老齢福祉年金の併給を禁止した国の国民年金法の規定は憲法25条や同14条に違反するとして提訴。であるとして,合憲判断。1988年4月,最高裁は,84年7月の東京高裁判決(原告死亡によって訴訟は終了)を支持,訴えを棄却した。1968年7月,東京地裁は,夫婦受給制限は違憲と判決。判決後,受給制限規定は撤廃された。1981年4月,東京高裁は老齢福祉年金は憲法25条の生存権保障を目的としたものではなく,併給禁止は合憲とした。資料を読む健康で文化的な生活を憲法25条の生存権の保障が,国民の権利として自覚されるのに大きく貢献したのは,朝日訴訟(次ページ判例)である。朝日訴訟を契機に,各種の関係訴訟が提起されるようになった(3)。堀木訴訟,牧野訴訟などの場合,その後の法律改正で原告の主張が実現されていることは,権利の主張の意義を考えさせる。