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概要

高校政治経済資料集

2自由権的基本権2??精神の自由●1●精神の自由のしくみ思想・良心の自由沈黙の自由(知識・証言・鑑定拒否を含まず)表現の自由結社の自由学問の自由信教の自由(制他限人なへしの影響がない)公共の福祉(制出言結集大研宗宗信他限学究教教人あの・とり自教結行の版論社会治授社為仰調整必緊急やむをえない場合のみ干渉要)(星野・小林『口語六法全書・憲法』自由国民社)●2●思想・良心の自由●関連憲法条文第1 9条〔思想及び良心の自由〕思想及び良おか心の自由は,これを侵してはならない。じゅ1判例例三菱樹し脂訴訟??思想・信条の自由と企業の採用拒否【事件の概要】1963(昭和38)年3月に東北大学を卒業した高野達男氏は三菱樹脂株式会社に就職した。ところが3か月の試用期間終了直前の6月に,会社から本採用をしないという解雇通知をうけ,社宅も追い出された。会社側の本採用拒否の理由は,高野氏が大学在学中の生協理事等の経歴を身上書に記載しなかったり,面接試験で学さぎ生運動歴をかくしたりしたことが悪質な詐欺にあたり,会社の管理職員としての適格性に欠けるというものであった。そこで,高野氏は,地位保全と賃金支払いを求めて東京地裁に提訴した。【裁判の経過】一審の東京地裁判決(1967.7.17)は,本採用拒否らんようは解雇権の濫用にあたり,不採用は無効であるとして,原告・高野氏が勝訴した。控訴審判決(1968.6.1,東京高裁)も本採用拒否は憲法第14条・労働基準法第3条の「信条による差別禁止」に反し違法な解雇であるとして,高野氏を勝訴させた。これに対して会社側が上告し,上告審では憲法規定第4節基本的人権の保障? 113の私人間の効力をめぐって論争が展開されたが,最高裁は全員一致で原判決破棄・差戻しの判決を下した。【最高裁(大法廷)判決の要旨】(1973.12.12)憲法19条,14条は「その他の自由権的基本権の保障規定と同じく,国又は公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので,もっぱら国又は公共団体と個人の関係を規律するものであり,私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない」(間接適用説)。また採用拒否については,憲法は,思想・信条の自由・法の下の平等と同時に,「22条,29条等において,財産権の行使,営業その他広く経済活動の自由をも保障しているから,企業者は……自己の営業のために労働者を雇用するにあたっていかなる者を雇い入れるか等につき,法律その他による制限がない限り,原則として自由にこれを決定することができ,企業者が特定の思想,信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも,それを当然に違法とすることはできない」と判示した。(別冊ジュリストNo 130『憲法判例百選I』有斐閣ほか)2間接適用説憲法は,国家権力に歯止めをかけることを目的とし,おおやけ国家が基本的人権を規制することを禁じている(公の規制)。したがって,憲法の規定は一部を除いて直接的にしじんかんは私人間に適用されない。※1ただし,私人間に直接適用されないとしても,「私人間では人権侵害をしても良い」ということにはならない。憲法の人権保障の精神は,民法などの私人間を規制する法(私法)の適用・解釈を通じて私人間にも適用すべきと考えられている。この考え方を「間接適用説」という。人権侵害を含む行為は違法・無効となりうる。※1私人間にも直接適用されると解される例第18条奴隷的拘束および苦役からの自由第27条3項児童の酷使の禁止第28条労働基本権資料を読む思想・信条ゆえの採用拒否,違法とはいえない「思想・良心の自由」とは,人がいかなる国家観・世界観・主義を持とうとも,それが内心の領域にとどまる限りは絶対的に自由であり,権力は,内心の思想に基づいて不利益を課したり,あるいは特定の思想を抱くことを禁じたりすることはできないということである(1)。思想・良心の自由に対する国家による侵害は当然禁じられているが,私人間いなの関係に適用されるか否かが争われたのが三菱樹脂訴訟である。最高裁は,憲法19条の規定は私人間(ここでは労使間)には直接的には適用されないとし,企業には経済の自由(雇用の自由)があり,社員の採用に当たって思想・信条を調査することは許され,採用拒否は合憲であると判断した(2)。第1編現代の政治