ブックタイトル資料政経
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高校政治経済資料集
112 ?第2章日本国憲法の基本的性格事例研究人身の自由犯罪捜査と人権??侵される人身の自由もう日本国憲法は,刑事手続きについて厳格な規定を設けて,人身の自由を保障しているが,現実には,職務質問や検問,所持品検査など身近なところでも権力による人身の自由の侵害がみられ,さらに別件逮捕や代用監獄など,犯罪捜査に当たっても人権の侵害があとを絶たない。刑事ドラマは違法シーンがいっぱい第1私たちは,警察官に職務質問や検問をうけること編がよくある。深夜帰宅途中に呼び止められ住所・氏現名や深夜歩いている理由などを聞かれたり,自動車代のの検問にでくわしたりする。やましいところがなけれ政ばいいじゃないか,と平気なのが普通だろうが,法治きょどう律上は「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し,若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」か,犯罪について「知っていると認められる者」だけが質問されていること(警職法第2条1項)は記憶しておいてよい。私たちが呼び止められたということは,このような「者」と思われたか,警察側が法的根拠なしに勝手な行動をとったに過ぎないか,のどちらかなのである。「その場で質問することが本人に対して不利であり,又は交通の妨害になる」場合に限って付近の派出所等に同行を求められる(同2項)が,それはあくまで本人の同意がなければならない。令状なしに何らかの強制力を警察が発し得るのは現行犯逮捕だけだからである。(憲法33条・35条)。ところが現実には,テレビドラマよろしく「署で聞かせてもらおうか」と無理に連行されたり「任意同行でひっぱる」といったことばが平然と使われている。所持品検査もひんぱんに行われているが,憲法上は現行犯でない限り「正当な理由に基づいて発せられ,且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状」がなければできない(憲法35条1項)し,法律上も,令状なしにできるのは逮捕された者の凶器所持だけに限定されている(警職法2条4項)。「ちょっと見せて下さい」に応ずる義務はないのである。管理人に鍵を出させて留守中のアパートの部屋に「ふみこむ」のもまったく違憲・違法である。これは警察の「犯罪捜査規範」108条にも明記されていることなのに,これまたテレビドラマよろしくしばしば行われている。(永井憲他『憲法学習のとびら』日本書籍)ウソの自白は留置場でつくられるいまなお自白は証拠の中心となっており,警察は自白させるためにあくしらゆる方法を駆使じょうとうする。常套手段となっている別件による逮捕。巧妙な拷問。長時間の取調べ。……家族や弁護人の面会を妨害し,いっそう絶望と孤立感を与える。自白すれば待遇上の特権をフルに与える。法律は,逮捕・勾留された者の収容先は拘置所(法務省の施設,刑務所とならぶ監獄の一つ)と定め,▲日本の「代用監獄」制度を告発警察が管理するする『Newsweek』日本版の記事(1989.6.15日号)留置場は,例外的,一時的収容施設としている。留置場が代用監*獄と呼ばれるのはこのためである。しかし現実には,90%以上の者が留置場に収容され,同じ屋根の下の房と取調室を往復することになる。法務省職員が管理する拘置所では,このような自由な取調べはできないし,……拷問や深夜の取調べ,アメとムチは通用しないといってよい。(佐野・西嶋『死刑か無罪か』岩波ブックレット)*代用監獄(代用刑事施設)は,1908(明41)年施行の監獄法で認められたもので,現行の「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」でも引き続き認められており,日本弁護士連合会や学者からの批判も多い。