ブックタイトル資料政経

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高校政治経済資料集

第4節基本的人権の保障? 111死刑廃止論おもな論点死刑存置論やばんいやせいさい1人を殺すことは人道に反し野蛮である。?遺族の被害・応報感情を癒す制裁としての死刑は,社2どんな凶悪犯の命であれ国家に人を殺す権利はない。会秩序の維持に欠かせない。3死刑に犯罪抑止効果はないから,廃止しても凶悪犯?生かしておくと同じような悪質な犯罪を犯す危険が罪は増えない。ある。4誤った裁判による冤罪の場合,死刑執行は取り返し?死刑には犯罪抑止効果がある。がつかない。?世論調査では死刑が支持されている。5死刑を執行する刑務官の人権を守る。主張1死刑制度の犯罪抑止力はない主張4死刑制度に犯罪抑止力はある死刑がなくなれば凶悪な犯罪が増えるので死刑は犯罪抑止のため必要だという意見があります。しかし,これには科学的証明がなされておりません。……問題なのは,抑止力があるのかないのか不確かなものを,いかにもあるかのごとく見せかけ,死刑制度があるため,この程度の犯罪にとどまっているのであると主張する人がいることです。(菊田幸一『死刑廃止を考える』岩波ブックレット)(インターネットの闇サイトで知り合った男三人が見ず知らずの女性を拉致し,カネを奪って殺害し山林に遺体を捨てた事件)事件発覚のきっかけは,男の一人が愛知県警にかけた電話だった。罪の重さに耐えかねたというより,「死刑が怖かった」かららしい。身勝手きわまる言い分だが,その後も繰り返されたかもしれない凶行を,「死刑」が抑止したともいえる。死刑廃止論者たちはこの言葉かがおとひこ精神医学者で作家の加賀乙彦さんが東京拘置所をどう聞くだろうか。(『産経抄』2007.8.28)に勤務しておられた際に145名の殺人犯に面接したずしょうちて尋ねたが,みんな死刑制度のあることを承知の死刑がすべての犯罪を抑制することはできないが,それが絶対におこなわれないという見通しは,うえで殺人を犯している,しかも犯行前に死刑を社会の犯罪に対する「歯止め」の一つを失わせるねんとう念頭に浮かべた者はただの一人もいなかった,犯行中に4名が死刑のことを思ったが,犯行を中止しなかった,死刑制度があるために殺人や強盗殺のではなかろうか……。思考実験をしてみよう。死刑が廃止されれば,組織暴力団の幹部は組員に,「あのタマ(標的)をとってこい。さもなければ殺す」人罪などが減るとは考えられないと述べています。きゅうきょくうという「究極の選択」をつきつけ得ることになる。(伊佐千尋・渡部保夫『日本の刑事裁判』中公文庫)かたぎ「暴力団員が堅気の人間を殺しても死刑にはならないが,親分は彼を殺せるし,殺しても死刑にはな主張2誤判の場合,とり返しがつかないらない」という状況が出現することになる。死刑廃止のもっとも大きな理由の一つは,なんさば(小田晋『人はなぜ,人を殺すのか?』はまの出版)といっても誤判の問題です。……人間が人間を裁く以上は,誤りをさけることはできません。……死刑に関しては,もし誤って無実の人を処刑して主張5死刑制度は社会の価値観のシンボル死刑制度は,人を殺すことが最高の極刑に値すしまって,あとで真実がわかっても,その命を回ひょうぼうるほどに悪いことだという価値観を標榜している復させることはできないのです。(菊田幸一『死刑廃止を考える』岩波ブックレット)主張3死刑は基本的人権の否定である。公共の福祉のために枠をはめられることがあるにせよ,法律以前の原理原則として,人は誰もみんな,人権がある。同時に,誰にも人権を侵す権利はない。ところで,人権としての「自由」の最たるものは,「生きる自由」だ。自分が生きて存在することを,寿命ものだねの限り続ける自由だ。……命あっての物種という古いことばがあるけれども,まったくのところ,命あっての人権,なのである。だから,命を奪うのは最大の人権侵害,その人の人権を根こそぎ打ち倒すことだ。そんな権利は誰にもない。だからこそ,殺人を犯した人は厳しく断罪される。ある人の人権を根こそぎ打ち倒す権利など,国家にもあるはずはない。(中山千夏『ヒットラーでも死刑にしないの?』築地書館)のである。最高の刑は死刑であるから,人を殺したら場合によっては死刑になりうる,ということを宣言しているのである。そこに死刑制度の意味があると言える。(林道義『父性で育てよ!』PHP研究所)主張6誤判と死刑廃止は別問題(「死刑の執行は,万が一誤判があった場合に取り返しがつかないから死刑を廃止せよ」というのは)別次元の問題を同一次元におく誤りを犯した議論である。誤判をしてはならないのは他の刑を科す場合であっても同じであって,誤判防止は,刑の執行とは別に,あらゆる刑について対策が講じられねばならない。(土本武司『法学セミナー・No. 494』所収)第1編現代の政治