ブックタイトル資料政経
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高校政治経済資料集
「学習の基本構造」を読む◎日本国憲法における基本的人権の体系基本的人権は,人が人間らしく尊厳をもって生きるためになくてはならない根本的権利で,人が生まれながらにもつ「天」から与えられた固有の権利てんぷであるという考えから天賦人権とも呼ばれる。日本おか国憲法は基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」(11条)とし,「国政の上で最大の尊重を必要とする」(13条)と位置づけている。ただ,永久不可侵の人権とはいっても,社会生いとな活を営む人間の権利であるから,他者との間に衝突が起きることがある。フランス人権宣言も「自由は,他人を害しないすべてをなし得ることに存する」(4条)と規定する。日本国憲法も12条で権利のらんよう濫用の禁止と公共の福祉のために利用する責任を規定している。ただ,精神の自由に対しては経済の自由よりも優越した地位を認め,その制約も異なる基準によるとする説(二重の基準論)が有力である。なお,検閲の禁止や拷問の禁止など公共の福祉による例外の許されない規定もある。また,日本国憲法は,権利のみならず,国民の義務として,保護する子女に教育を受けさせる義務,納税の義務,勤労の義務を規定している。〔自由権〕自由権は,国民の身体・精神・経済活動などの自由に対する国家の不作為(何もしないこと)を求める権利である。その意味で,「国家からの自由」ともいわれる。人身(身体)の自由身体の自由がないことは奴隷状態と同様であり,身体の自由こそ人間としての第一の条件といえる。憲法は,18条と31条以下でとくに詳細な規定を設けている。精神の自由明治憲法時代,検閲が行われ,また治安立法もあって多くの弾圧が行われたが,日本国憲法は,19?21条及び23条で,精神の自由として,思想及び良心(内心)の自由,信教の自由と政教分離,集会・結社・表現の自由及び検閲の禁止,通信の秘密,学問の自由を規定している。経済の自由憲法は経済活動の自由を保障するために,職業選択・居住移転の自由と財産権の不可侵を規定している。ただし,これらの権利には,第4節基本的人権の保障? 107明示的に「公共の福祉に反しない限り」(22条)などの制約がある。これはワイマール憲法の「所有権ともなは義務を伴う」(153条)という財産権の社会化や社会国家の観念の系譜につながるものである。〔平等権〕個人を尊重し,基本的人権を保障する社会では,個人を平等に扱うことが前提となる。もと法の下の平等は,法の適用が平等である(法適用の平等)とともに,法の内容も平等原則に基づかねばならない(法内容の平等)ことを意味する。日本国憲法は14条で法の下の平等を定めて,人種,信条,性別,社会的身分,門地などによる,政治的関係(参政権や裁判を受ける権利など),経済的関係(租税の賦課,財産権の収用や勤労の権利など),社会的関係(居住の権利や教育を受ける権利など)における差別を禁止している。〔社会権〕社会権は,20世紀になって,福祉国家・社会国家の考え方に基づいて,とくに社会的・経済的弱者の保護を目的に出現した。その内容は,国民が人間に値する生活を営むことを実現するために国家の責務を伴う権利である。その意味で「国家による自由」ともいわれる。また19世紀的権利といわれる自由権に対比して,20世紀的権利といわれる。日本国憲法は,25条で生存権を規定し,すべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しているほか,教育を受ける権利,勤労権,労働三権などを規定している。〔参政権〕国民主権の立場からも,人権が保障される国政を実現するという意味からも,国民に政治に参加する権利(参政権)が認められなければならない。参政権は,近代憲法にあまねく保障されている重要な権利である。参政権の中核は選挙権であるが,日本国憲法は,最高裁判所裁判官国民審査権や憲法改正承認権なども定めている。〔請求権(受益権)〕憲法や法律でいくら権利が保障されていても,それが侵害されれば,憲法や法律による保障は文字通り絵に描いた餅となる。請求権は,そのような事態から国民を救出するための手段となる。憲法は,請願権,国家賠償請求権,刑事補償請求権,政治権力から独立した公平な司法機関による裁判を受ける権利を規定している。新しい動き/視点成年被後見人の選挙権/2013年3月,東京地方裁判所は,「成年後見人」がつくと自動的に選挙権を失うことを決めた公職選挙法の規定が憲法に違反するとの判決を下した。これは,ダウン症の女性が起こした訴訟で,知的障害などを理由に選挙権を制限すべきかが争われた。成年後見人制度は,自分の財産の管理能力に欠ける場合に後見人を置く制度だが,判決は,被後見人とされる人が一律に選挙権を行使する能力に欠けるわけでないとし,この女性の選挙権を認めた。この判決を受けて,国会は5月に公職選挙法の上記の規定を改正している。成年被後見人は,約13万人がいると言われる。日本の人口からすれば少数でしかない人たちの権利を憲法が守った形だ。少数派の立場に寄り添う立憲主義の真骨頂が示された例とも言える。第1編現代の政治