ブックタイトル資料政経

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概要

高校政治経済資料集

第1編現代の政治94 ?第2章日本国憲法の基本的性格●4●日米安保の変遷?日米関係の70年1占領期(1945?50)非軍事化から再軍備へ2旧安保時代(1951?59)米国軍事力への依存3安保改定(1960)激しい反対運動4冷戦激化(1961?68)日本巻き込まれ論5デタント(1969?77)G N P1%の歯止め6役割分担(1978?86)軍事同盟としての性格鮮明に7冷戦終結後(1987?現在)新たな役割模索の時日本を占領した連合軍(米国)は当初,日本の非軍事化,民主化,非中央集権化を政策の柱とした。しかし47年ごろから,冷戦が本格化したため,対ソ封じ込めの一環として,日本を「反共の防壁」にする方向に転換。50年6月,朝鮮戦争勃発。マッカーサー連合国軍最高司令官は日本政府に,ただちに警察予備隊の創設と海上保安庁の増員を指示し,実質的な日本の再軍備が始まった。吉田茂首相は,日本の復興のため「軽武装・経済優先」路線を選択。日本の安全保障は,基本的に米国の軍事力に依存することにし,51年9月,サンフランシスコ平和条約とともに調印された日米安全保障条約(旧安保)で,米国に日本国内の基地使用と駐留をみとめた。翌年警察予備隊を保安隊に改組。54年に調印された日米相互防衛援助(M S A)協定は,軍事援助と引き換えに日本に防衛力増強を義務づけた。この結果,防衛庁,自衛隊が発足した。旧安保条約は,基地提供を義務づけたが,米国の日本防衛義務は明確ではなかった。さらに,米軍の役割に,日本での内乱の鎮圧を含める「内乱条項」があるなど,対等とは言いがたい内容だった。新安保条約は「内乱条項」を削除し,また,軍事的脅威に対し共同で防衛に当たることなどを確認する内容で,60年1月に調印された。しかし,空前の規模の反対運動で,岸信介首相は退陣に追い込まれた。61年のベルリン封鎖,62年のキューバ危機など米ソの冷戦が激化し,ベトナム戦争で沖縄からB52爆撃機が出撃したことから,「極東の範囲」をめぐる論争が繰り広げられた。戦争に巻き込まれる危険を訴えた「巻き込まれ論」が支持され,政府は「武器輸出三原則」や「非核三原則」を打ち出したが,ラロック元海軍少将による「核持ち込み証言」が飛び出して,安保への不信感は解消されなかった。ニクソン大統領は69年,地域防衛については各国の負担を増やす「ニクソン・ドクトリン」を打ち出す。米国は,ニクソン訪中,戦略兵器制限条約締結などで,デタント(緊張緩和)を実現させた。日本政府は,76年,小規模侵略に独力で対処する基盤防衛力構想を柱とする「防衛計画の大綱」を決定。同時に防衛費を国民総生産(GNP)の1%以内に抑える歯止め策も決められた。「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)が78年に作られ,日本が有事の際は,攻撃は米国,防御は日本という役割分担が規定された。日米安保は,ソ連を仮想敵とした軍事同盟の性格が鮮明になった。また,79年度から「思いやり予算」が計上され,米軍駐留費の財政支援も開始された。ソ連は79年暮れにアフガニスタンに侵攻,デタントが崩れた。レーガン大統領の登場もあって,米国は改めて軍備増強に力を入れはじめた。ゴルバチョフ・ソ連書記長が登場し,米ソは87年,中距離核戦力(INF)全廃条約調印。緊張緩和の流れは加速し,89年12月,マルタ島での米ソ首脳会談で冷戦終結宣言となった。これに先立つ同年5月,「仮想敵」のソ連が日米安保体制を敵視しないことを表明。対ソ封じ込めという意味での日米安保も,一応その役割を終えた。同時に,次期支援戦闘機の開発をめぐって日米対立が起きるなど,安全保障分野に通商摩擦が波及した。日米両政府は安保の新たな意義づけに迫られ,78年策定のガイドラインを全面的に見直した新ガイドラインを決定した(97年)。99年に成立した周辺事態法などガイドライン関連法によって,自衛隊は日本周辺有事で米軍への支援が可能になり,日米安保体制は大幅に強化された。(『朝日新聞』1995.1.6『日本の論点'97』より作成)資料を読む再確認せまられる安保体制戦後の日本の政治史は日米安保体制をめぐる保革の対立を軸に展開されてきたともいえる。また,国際情勢の変化は安保体制のありかたに直接影響し,日本の国際社会における立場を規定してきた。しかし,1989年の冷戦終結は「ソ連の脅威」という安保体制の存在根拠を揺るがしている。安保の再定義が日米間で進められているが,冷戦後にふさわしい安全保障のありかたを求めて基本的な発想の転換が迫られている(3・4)。